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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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【IF Another despair】擬態(ストックキャラクター)

【20XX年 封鎖特区 鎌倉】

始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。

―廃屋Pigeon-Blood

「ピジョン、少しいいか?」
「あら、何でございましょう?」
この廃屋で数少ない、"首魁"を"ピジョン"と呼ぶ一人。
アキラと呼ばれる長身の女性は、何時にもまして不機嫌そうな表情で"首魁"の前に現れた。
振り向いたピジョンを前に2、3秒間をおいて、口を開く。
「連絡を取り合っていた、レジスタンスの一つが潰れた」
「っ!? …教団ですか」
「間接的には…そうだ」
「…?」
答えにくそうに頭をかくアキラに、ピジョンは首をかしげる。
「自滅だ」
「…『自滅』?」
ますますわけがわからないという風に、ピジョンが眉をしかめる。
アキラもそれは感じているのか、苛立たしげに手振りもそえて声を荒げる。
「意味がわからねえ…!
あいつら、自分達で殺し合いをはじめて勝手に死にやがった!!」
「…!!?」


―廃屋・中央作戦会議室
より詳しい報告を聞くため、アキラとピジョンは場所を移した。
部外者はもとより、身内の者でさえも入室が制限されるこの部屋を、作戦会議室という。
「下っ端の連中に向こうのアジト探索させて、見つかったのがこの日記だ」
「…ふむ」
壊れかけの電球の灯りを頼りに、ピジョンが泥まみれの手記に手をのばす。
ところどころには赤黒い血のシミもついていて、よくもまあ残っていたものだと感心してしまう。
痛んだページがこれ以上破けぬよう、慎重に日記をめくっていく。


<X月Y日 晴れ>
今日はゴーストの襲撃がなかった。ゆっくり休もう。

<X月Y+1日 晴れ>
探索任務を終えた仲間達が帰ってくる。
食料と綺麗な水、そして幾ばくかの嗜好品を手に入れた。

1名だけ行方不明者がでてしまったらしい。
畜生め、きっとゴーストに喰われたに違いない。

<X月Y+2日 晴れ>
ゴーストの散発的な襲撃があった。
無事に撃退できた。

<X月Y+3日 くもり>
行方不明だったはずの仲間が一人帰ってきた。
にわかにアジトが喜びで活気づく。

当人は疲れていると言ってすぐに寝てしまったが、久々の酒だ。
悪いが楽しませてもらうとしよう。

<X月Y+4日 雨>
アジトの中で死者が出た。
殺された者は壁にはり付けられ、ひどい有様だった。

教団の仕業に違いない。
しかし、このアジトがバレたのだろうか?
幹部による緊急の対策会議が開かれる。
が、結局何も決まらなかった。

<X月Y+5日 晴れ>
二人目の死者が出る。
壁には血で『教団に従え』とだけかかれていた。

だが教団の連中の姿は誰も見ていない。
おかしい。どうなってるんだ。
アジトの内部がにわかにさわがしい。皆不安になっているんだろう。

<X月Y+6日 くもり>
3人目の死者がでた。畜生。
アジトの仲間が、この前一人で帰ってきた
『○○(汚れで解読不能)』が怪しいと叫びだす。

アジト内を探索するが、みつからない。
裏切ったのか、あいつが?

<X月Y+7日 雨>
4人目の死者がでる。
顔を潰されていて、かろうじて服装から昨日見つからなかった
『○○(汚れで解読不能)』だという事がわかった。

つまり犯人はまだアジトの中にいるという事なのだろうか。
なにがなんだかわからない。
仲間達も混乱している。

<X月Y+13日 雨>
あれから死者は毎日一人ずつ出ている。
どれもこれも顔の皮を剥ぎ取られていて、見るに耐えない。

誰が裏切り者なのかわからない今、
仲間同士の不安はピークに達しようとしている。

<X月Y+15日 晴れ>
ついに恐れていた事態が起きてしまった。
水の配給をめぐってのトラブルが、殺人事件にまで発展してしまった。
これを引き金に、アジト内部のあちこちで住人同士のトラブルが一気に噴き出す。

混乱がひどくて収拾がつかない。
エノシマエリアで謎の爆発が起こったらしいが、それどころではない。

<X月Y+17日 晴れ>
アジト内が戦場のようになっている。最悪だ。
私自身、かつての味方を何人殺したかもう憶えていない。

<X月Y+18日 晴れ>
誰か助けてくれ、誰か



日記はそこで途切れていた。
つまりは、それを記していた者が死んだという事。
「これは…一体」
険しい表情でピジョンが呟く。
「さっぱりわからん。内部に裏切り者がいたらしいが…。
容疑者の奴も、最初の方で死んでるからな」
腕を組んだアキラも依然として表情が晴れない。
「…生存者は?」
「いねえよ。当然探させたが、アジトから途中で逃げたと思しき奴らの成れの果て、ゴーストが何匹かいたくらいらしい」
「……ふむ」
どう対処したものかとこめかみを押さえるピジョン。

「…。アキラさん、この日記の内容、
他言せぬよう下の者達にも伝えておいて下さい」
「ああ、もうしておいた。…。効果があるかどうかはさておき、な」
「…」

そう、『不安』の伝播力たるや尋常ではない。
しかもその原因がわからぬとあれば、なおさら…。
『これはここだけの話だが』『本当は秘密にしなきゃならないんだが』
そんな前置きを盾に、たちの悪い疫病のように、ゆっくりと、だが着実に不安というものは人から人へと感染していく。



「はは…。内部から崩すのは、容易い容易い…」
"道化師"は誰もいない廃墟の山で一人、奪った顔の皮を投げ捨てて笑った。
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