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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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【IF Another despair】未だ彼女は柘榴を持たず

くるりくるりと着物の裾が翻る。
がしゃりがしゃりと炎が舞う。
ぴしゃりぴしゃりと鮮血が飛び散る。

人間では有り得ない、金を熔かしたような色を反射する瞳と
青みを帯びた銀が所々混じったぬばたまの長い髪の麗しい生き物。
髪の黒い所はそのまま夜に溶けていきそうだ。
そして、たおやかでほっそりした身体にそぐわぬ異形の腕。

「―――これで何人殺したんでしょう。」
足元に散らばる、人肉が焼ける嫌な匂いを漂わせる死体は教団兵士のもの。
自分の荷物を狙ったのか、それとも自分に劣情を抱いたのかはもはや分からない。
「ああ……風がまた………」
自ら葬った連中には悔恨の片鱗も見せることは無く、
風から教え子の死を受け取り悼む。
オオフナで大規模な爆発があったと聞いたが、やはり巻き込まれた教え子が居たのだ。
親とともに乗り込んだか、自ら武器を取る決意をしたのか。
その想いは風となり師に向かう。
(あなたたちのおもいはムダではありませんよ。だから……ゆっくりやすんでくださいね。)
優しげな表情の裏に、修羅の如き怒りが滾る。
―――いや、修羅ではなく鬼子母神か。

蜘蛛は母親が卵や幼虫を守るものが多い。
わが子にその身を食わせてしまう種すらある。
教師という職業柄、彼女の教え子への愛情は母親のそれと似たものだったのだろう。
故に、教え子が命を落としたという衝撃はわが子を失ったそれと同じようなものだ。
人を喰らって土蜘蛛となり、教師となり、閉ざされたこの地でさんざん人を殺しておきながら
今教え子の死に憤る絢音。
他者の子を食べておきながら自らの子が一人居なくなった時には
髪振り乱して探し回った鬼子母神。
似たようなものではないか。

「わたしは……鬼子母神?人喰いの母………なのですか?」

彼女はぽつりと呟く。
吉祥天女ではないわね、と苦笑する。
他者への愛は無いに等しく、ただ半径10メートルのプライド
――自らの子を守ろうとする母親のもの――があるのみなのだから。


「仕方が無い、歩きましょう。」
広くて狭いこの地なら、彷徨うだけで旧知の誰かに会えるだろう。
敵でも味方でも構わない。誰か、「あいたいな………」
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