あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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――呼吸及び心拍の停止を確認しました……とどめを指しますか?
いや、死体を回収し基地に持っていけ。……人形の素材に使う
了解しました。しかしルチャドールを我々の人形(ドール)にするわけですか?
ああ、だがクソつまらんジョークだな――
気がつくと既に日は高く上っていた。
以前は何かの雑居ビルだったのだろう建物の一室で目を覚ますと、ここに至る経緯を思い出す。
確か、教団の人間を蹴散らした後に、大きな爆発音があって、それから大量のゴーストが現れたから、夜明けまでやりあっていたんだっけ?
まだ、覚醒途中の頭で昨日の出来事を順番に辿る。
「それで20体くらい潰してあとは……ああ数が多いから逃げたんだ。うん、そのはず」
言葉に出して、自分の記憶を脳内に念入りに刻み込む。
「で、ここで安全を確認してそのまま寝た…と」
僕が記憶を無くしたのを自覚してから、時々やる作業。こうしていないとまた失いそうになる……
――ターン……
外から銃声がした。
近くの窓に身を寄せて、手鏡を取り出すとそれを使って外の風景を覗く。
丁度この窓の真下あたり、ビルとビルの谷間の路地に女性と、防護服を身に付けた……教団の人間だろう二人組の男がいた。
「おっと、もう逃げられないぜ。大人しくしてもらおうか」
鏡を通してなので良くは分からないが防護服の男が女性の方を追い詰めているようだ。
「ここら辺は物騒だから俺たちが送ってやるって言ってんのに断るなんてよう」
男のうち銃を構えていると思われる男が言った。
「そうですよ、しかも逃げ去ろうとするなんて……ははーん、隊長。ひょっとしてこの女能力者じゃないですか?」
……色々な展開に何だか頭が真っ白になった。
「違います!私は能力者なんかじゃあ……」
「おっと否定するところが怪しいな!」
反論しようとした女性の眼前に銃口を突きつけ、言葉を遮る
「……!?」
「それに……こんなにイイ乳をしているんだ、間違いなく能力者に違いない」
何だか変な流れではあるが会話は続いている。それも個人的に好ましくない方向へ。
僕は懐から取り出した覆面を被ると、窓から身を乗り出した。
「よって、俺たちはこれから身体検査を行う!いいな!?」
真下の奴らとの高さは建物3階分、問題はない。
距離、高さ、相手の位置を確認した後、僕はそのまま男たちめがけて飛び降りた。
「いやぁ……あ?」
女性が悲鳴をあげようとしたのとほぼ同時に男達のうち一人に身体を浴びせ掛けた。
俗に言うフライングボディプレスだ。
「…………」
呆然とする、男達。
そりゃそうだ、突然上から男が降って来たんだから。
彼らの表情を尻目に僕はゆっくりと身体を起こす。
ちなみに下敷きになった人間については……足元に真っ赤な花が咲いたとだけ言っておこう。
「お楽しみのところ悪いんだけど……ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
答えは返ってこないと分かっていても、つい聞いてしまう。
ちなみに落下の時の怪我はなかった……どうも、これが僕の能力らしい。
「ふ…『覆面』!?」
僕の姿を見て、男は先程女性に突きつけていた拳銃を構える。
その動きは訓練された兵士としては見事な動きだったが……逆に綺麗過ぎた。
「えい」
タイミングを合わせて銃に手をかけるとそのままスライドを引く。
これで撃てない。あとは手首を極めて銃を奪い取り、そのまま相手を投げ飛ばした。
「……大丈夫?」
投げ飛ばした敵が動かなくなるのを確認し、奪った銃をズボンにねじ込むと僕は女性の方に向き直り声をかけた。
しかし……
「ひッ……!?」
彼女は恐怖の表情を顔に貼りつかせ、その場に尻餅をついた。
まるで先ほどの男達よりも恐ろしい存在に出会ったかのように……。
……やりすぎたかな?
「……どうした、大丈夫かい?」
再度声をかけ、手を差し伸べる。
しかし彼女は僕の手から逃げるかのように後ずさりし、子供のように泣き始めた
「いや…いや……いやあ!!殺さないでぇえええ!お願い、お願いですから!!」
……え?
「ちょ、ちょっといきなり、いや別に助けただけ……」
あまりの拒否反応に戸惑いつつも何とか会話を試みようとする……が彼女の反応は変わる事は無かった。
「お願いします…お願いですから……」
「……ッ」
必死になって哀願する女性に対し、僕は何も出来ず、その場を逃げるように立ち去った。
「…………」
泥水の流れる川を見つめ、僕は考えていた。
助けたはずの女性の反応。
何度か教団の兵士とやりあったり、気まぐれで人助けしたときにも恐れられたりしたことはあったが、今回のような拒絶は初めてだった。
しかも初めて会ったはずの人に……。
「初めて?」
疑問に気付き、思わず声を上げた。
初めて会った人間にあそこまでの拒絶反応を示すのはおかしい。過去に何らかの形で僕と関わっていた可能性があるということ。
……つまりは記憶のなくなる前の僕を知っている。
答えを導き出すと、さっき彼女と会ったところへ戻ろうと走り始めた
……がすぐに足を止める。
「けど、あの感じだと無理だよなぁ……」
歩みを止めた原因を呟き、あの時の彼女の表情を思い出そうとして
……脳裏で何かがフラッシュバックしてきた。
「――ドール691よりアルファリーダーへ、敵は全員無力化。非武装の戦闘員が建物に潜んでいると思われます」
目の前には古ぼけた教会。
足元には私が命令通りに排除した男女の死体。
教会の中には女子供といった非戦闘員が潜んでいる。
「アルファリーダーよりドール619、BETHを起動し最適を思われる選択を実行しろ」
「了解、BETH起動。現状況における適切な行動を指示」
私の命令と同時に視界の左隅にディスプレイが表示され、
幾つかの選択肢が表示された。
『A 施設内に侵入し非戦闘員を排除
B 遠距離よりダークハンドで施設を破壊
C 施設を放置、基地へ帰還
現時点ではAが最適と考えます 』
「了解…Aを選択。実行します」
同時に私は教会の扉を破壊し、中に侵入した。
中には数人の女子供、戦闘力は皆無……だが、BETHの選択は排除すべきと出ている。
「クレセントファング」
怯える人間たちに向かい、私は三日月の軌跡を描いた蹴りを叩き込んだ……一人残らず。
「……こちらドール691、現時点では生命体は存在しない。BETHも任務終了と出ている、次の指示を」
爪先についた赤い何かを床にこすりつけ、次の指示を仰ぐ。
「アルファリーダーよりドール691。任務は終了だ基地へ帰還後データを提出せよ」
「了解――」
「――今のはなんだ?」
脳裏に浮かんだ光景に手が震える。
「僕が殺したのか……彼らを?女子供も含めて?」
――ぬるり――
急に手にぬめり感を感じる。
見ると両手が血に染まっていた……。
……汚い。
僕は川に飛び込み、手を洗う。
深さは腰まであったがそんなことは気にならない
汚い
汚い
汚い
感覚がなくなるまで
掌が真っ赤になるまで
泥水で何度も手を洗うが……結局手にまとわりつく滑りは取れなかった
いや、死体を回収し基地に持っていけ。……人形の素材に使う
了解しました。しかしルチャドールを我々の人形(ドール)にするわけですか?
ああ、だがクソつまらんジョークだな――
気がつくと既に日は高く上っていた。
以前は何かの雑居ビルだったのだろう建物の一室で目を覚ますと、ここに至る経緯を思い出す。
確か、教団の人間を蹴散らした後に、大きな爆発音があって、それから大量のゴーストが現れたから、夜明けまでやりあっていたんだっけ?
まだ、覚醒途中の頭で昨日の出来事を順番に辿る。
「それで20体くらい潰してあとは……ああ数が多いから逃げたんだ。うん、そのはず」
言葉に出して、自分の記憶を脳内に念入りに刻み込む。
「で、ここで安全を確認してそのまま寝た…と」
僕が記憶を無くしたのを自覚してから、時々やる作業。こうしていないとまた失いそうになる……
――ターン……
外から銃声がした。
近くの窓に身を寄せて、手鏡を取り出すとそれを使って外の風景を覗く。
丁度この窓の真下あたり、ビルとビルの谷間の路地に女性と、防護服を身に付けた……教団の人間だろう二人組の男がいた。
「おっと、もう逃げられないぜ。大人しくしてもらおうか」
鏡を通してなので良くは分からないが防護服の男が女性の方を追い詰めているようだ。
「ここら辺は物騒だから俺たちが送ってやるって言ってんのに断るなんてよう」
男のうち銃を構えていると思われる男が言った。
「そうですよ、しかも逃げ去ろうとするなんて……ははーん、隊長。ひょっとしてこの女能力者じゃないですか?」
……色々な展開に何だか頭が真っ白になった。
「違います!私は能力者なんかじゃあ……」
「おっと否定するところが怪しいな!」
反論しようとした女性の眼前に銃口を突きつけ、言葉を遮る
「……!?」
「それに……こんなにイイ乳をしているんだ、間違いなく能力者に違いない」
何だか変な流れではあるが会話は続いている。それも個人的に好ましくない方向へ。
僕は懐から取り出した覆面を被ると、窓から身を乗り出した。
「よって、俺たちはこれから身体検査を行う!いいな!?」
真下の奴らとの高さは建物3階分、問題はない。
距離、高さ、相手の位置を確認した後、僕はそのまま男たちめがけて飛び降りた。
「いやぁ……あ?」
女性が悲鳴をあげようとしたのとほぼ同時に男達のうち一人に身体を浴びせ掛けた。
俗に言うフライングボディプレスだ。
「…………」
呆然とする、男達。
そりゃそうだ、突然上から男が降って来たんだから。
彼らの表情を尻目に僕はゆっくりと身体を起こす。
ちなみに下敷きになった人間については……足元に真っ赤な花が咲いたとだけ言っておこう。
「お楽しみのところ悪いんだけど……ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
答えは返ってこないと分かっていても、つい聞いてしまう。
ちなみに落下の時の怪我はなかった……どうも、これが僕の能力らしい。
「ふ…『覆面』!?」
僕の姿を見て、男は先程女性に突きつけていた拳銃を構える。
その動きは訓練された兵士としては見事な動きだったが……逆に綺麗過ぎた。
「えい」
タイミングを合わせて銃に手をかけるとそのままスライドを引く。
これで撃てない。あとは手首を極めて銃を奪い取り、そのまま相手を投げ飛ばした。
「……大丈夫?」
投げ飛ばした敵が動かなくなるのを確認し、奪った銃をズボンにねじ込むと僕は女性の方に向き直り声をかけた。
しかし……
「ひッ……!?」
彼女は恐怖の表情を顔に貼りつかせ、その場に尻餅をついた。
まるで先ほどの男達よりも恐ろしい存在に出会ったかのように……。
……やりすぎたかな?
「……どうした、大丈夫かい?」
再度声をかけ、手を差し伸べる。
しかし彼女は僕の手から逃げるかのように後ずさりし、子供のように泣き始めた
「いや…いや……いやあ!!殺さないでぇえええ!お願い、お願いですから!!」
……え?
「ちょ、ちょっといきなり、いや別に助けただけ……」
あまりの拒否反応に戸惑いつつも何とか会話を試みようとする……が彼女の反応は変わる事は無かった。
「お願いします…お願いですから……」
「……ッ」
必死になって哀願する女性に対し、僕は何も出来ず、その場を逃げるように立ち去った。
「…………」
泥水の流れる川を見つめ、僕は考えていた。
助けたはずの女性の反応。
何度か教団の兵士とやりあったり、気まぐれで人助けしたときにも恐れられたりしたことはあったが、今回のような拒絶は初めてだった。
しかも初めて会ったはずの人に……。
「初めて?」
疑問に気付き、思わず声を上げた。
初めて会った人間にあそこまでの拒絶反応を示すのはおかしい。過去に何らかの形で僕と関わっていた可能性があるということ。
……つまりは記憶のなくなる前の僕を知っている。
答えを導き出すと、さっき彼女と会ったところへ戻ろうと走り始めた
……がすぐに足を止める。
「けど、あの感じだと無理だよなぁ……」
歩みを止めた原因を呟き、あの時の彼女の表情を思い出そうとして
……脳裏で何かがフラッシュバックしてきた。
「――ドール691よりアルファリーダーへ、敵は全員無力化。非武装の戦闘員が建物に潜んでいると思われます」
目の前には古ぼけた教会。
足元には私が命令通りに排除した男女の死体。
教会の中には女子供といった非戦闘員が潜んでいる。
「アルファリーダーよりドール619、BETHを起動し最適を思われる選択を実行しろ」
「了解、BETH起動。現状況における適切な行動を指示」
私の命令と同時に視界の左隅にディスプレイが表示され、
幾つかの選択肢が表示された。
『A 施設内に侵入し非戦闘員を排除
B 遠距離よりダークハンドで施設を破壊
C 施設を放置、基地へ帰還
現時点ではAが最適と考えます 』
「了解…Aを選択。実行します」
同時に私は教会の扉を破壊し、中に侵入した。
中には数人の女子供、戦闘力は皆無……だが、BETHの選択は排除すべきと出ている。
「クレセントファング」
怯える人間たちに向かい、私は三日月の軌跡を描いた蹴りを叩き込んだ……一人残らず。
「……こちらドール691、現時点では生命体は存在しない。BETHも任務終了と出ている、次の指示を」
爪先についた赤い何かを床にこすりつけ、次の指示を仰ぐ。
「アルファリーダーよりドール691。任務は終了だ基地へ帰還後データを提出せよ」
「了解――」
「――今のはなんだ?」
脳裏に浮かんだ光景に手が震える。
「僕が殺したのか……彼らを?女子供も含めて?」
――ぬるり――
急に手にぬめり感を感じる。
見ると両手が血に染まっていた……。
……汚い。
僕は川に飛び込み、手を洗う。
深さは腰まであったがそんなことは気にならない
汚い
汚い
汚い
感覚がなくなるまで
掌が真っ赤になるまで
泥水で何度も手を洗うが……結局手にまとわりつく滑りは取れなかった
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