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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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 【IF Another despair】人のカタチをしたナニカ

丘が教会の床を掃き清めている。
 地面に散らばるのは詠唱銀ばかりで、先ほどまでうめいていたリリスはもう残らず消滅してしまった。
 集めた銀を出口から掃き出すと、丘は扉を閉めて、ポケットの工具で元通りに鍵をかけた。
 
 「お世話になりました。」
 
 パンパン、と二つ拍手。
 
 「いや、拍手は無いと思いますわ。」
 「神様は寛容ですからこんなことで怒ったりしませんよ♪」
 
 丘が振り向く。ツーテールがなびいた視界の先に、数人の女性がその場に立っていた。
 誰も彼も、振るいつきたくなるような美女揃い。潤んだ瞳に扇情的な唇、申し分ないボディライン。彼女等はまるで、『そういうこと』のためだけに生まれてきたような……。
 
 「僕は急ぐから行きませんと♪
  鳩様にはよろしく言っておきますから。」
 「遊んでくださいませんの?」
 「僕は『筧次郎』ではないんです、少しばかり厄介な事情を抱えてましてー……それに、僕、これでも征服欲強い性質ですからね。」
 「気が合いますわ、わたくしどもも、そういう男の子を屈服させるのが好きなのでしてよ。」
 「屈服させられるのは大嫌いなんです♪勘弁してください。
  また宇宙が一回りして、何かの間違いで僕がド級のマゾに生まれ変わった時にでも、お相手願いますよ。」
 「つれないわねー。」
 「それより向こうのあれがねー?」
 
 丘が懐から双眼鏡を出して、地平線の向こうで蠢く不定形の影を見つめた。
 
 「あれ?ああ。あれね……。」
 「あ、ヤバ。」
 
 エノシマ・エリアを大規模な粉塵爆発が襲ったのは、その直後のことである。
 
――――――――――

筧・小鳩と街田・良は、粉塵爆発が捲り上げた土砂に埋もれていた。
爆心地から比較的遠いとは言え、爆風だけでなく破片も盛大についてくる大規模爆発から彼らも無事ではいられない。

――まずいな。

埋もれたまま、小鳩は左手の指先に感じる街田の気配を確かめる。
血流が微弱。触っても反応が無い。

「……結局、使わずに終わってしまいますか……。」

小鳩は右手を顔に当てると、自らの両の目を抜いた。

「魔眼、朽ちて、魔力と物理に還るがいい。生きているべきでないものを殺すために、生きているべき者を生かすために。」

握りつぶした目玉はガラスのようにバラバラに砕け、小鳩の手の中で光を放つ。
震える左手を伸ばして、欠片を街田の指先に当てると、小鳩の体は分解し詠唱銀となってその場に積もった。





「んお……、お?」

ああ、何だっけ?何でこんなに暗いんだ?確か爆発があって……。
ああ、埋まってるんだ、俺。

「うーーーーーーーん!!!」

思いっきり腕で体を持ち上げる。重たい土砂が滑り落ちて、新鮮な空気と陽光が彼の体を包む。深呼吸。

「あれ?」

鼓膜が破れたような気がしていたんだけど、もう痛くない。派手に吹っ飛ばされた気がしたんだけど、打撲の痛みも無い。それどころか、妙に力が湧いてくる。
何だかこの感じ……。

だが、状況は彼に思い出す暇を与えてはくれなかった。

自爆によって核を失った『切り札』は、群体としての姿を保てなくなり、個別の地縛霊として活動を始めたのだ。
爆心地から押し寄せる、鎖を引きずる音。地獄の底から這い出す、文字通りの死霊たち。

「……同級生相手とかよりは、随分とマシかな。」

イグニッション。
街田の舌が、唇の端を伝う汗を舐めた。


――――――――――
 
 「すいません大きな声でお願いします!
  さっきの爆発で耳が痛くて……。
  ああ、エノシマが爆心ですね。ちょっとまだ煙で見えませんけど、先遣隊は多分全滅でしょうね……。
  いや、あれは多分、ゾンビハンターの『粉塵爆発』じゃないかと。規模の割りに火災が少ないのと、能力者への被害がやたらでかいのと。あと粉みたいなのが見えたんで。
  え?すいません大きな声で!……いや、爆発したのはでかいあのゴーストですね。
  あ!あー、えーとね、爆心から。はい、爆心の部分からゴーストが出てきてますね。霊の類だと思います。あれだ、あのー、集合体がバラバラになって出てきたんじゃないかと。
  数?1000まで数えてやめました。はい。酷い数です。エノシマはちょっとマズいですね。
  ……『教団』ですか?……今回で多分やれるとおもいますよ。『二つ名(ネームド)』が過去最多の数出てるんで。
  僕等の戦いは、個の強さが大きく影響しますからね。あはははは、すいません人外で♪
  僕?『二つ名』もない僕では話にならないでしょう。くれるってんなら別ですけどさー……。
  ええ、『教団』は倒せる見込み強いです。五分くらい?ちょっと遠目に見てましたけど、明らかに頭がワントップなんで。あれが倒せれば多分組織は瓦解します。以前にも報告しましたけど。
  今回で倒せなければ、もう核じゃないかと。ええ。いや、本当に。
  ……それよりもね、『ガーデン』がまずそう。ホドガヤで『葬失(ロスト)』と交戦し始めてます。そう、『喪失』。
  あっちは能力者を囲ってるんで、層が厚いんですよね……。
  え?……難しいですね。多分、これもトップ次第かなと。『葬失』の能力はおかしいレベルですけど、『ガーデン』のトップがどれだけかってことですよね。
  ……本当に、人外の戦いは個の強さが大きく出るんで。これは手を出さない方がいいかもしれない。正規の軍では恐らく『喪失』は潰せない。
  あっはっはっはっはっはっは!あなたこそ円売って今回大もうけしたんでしょう?僕の保釈金もどうせ碌でも無い金のはず。
  大丈夫ですよ、鎌倉は平和になって、株がまた上がります!僕のこともどうせ、死んだらいいのにって思ってるんでしょう?
  生きて帰ったら殺して差し上げますからご安心を、この売国奴!
  では、先ほどのゴーストがそろそろ迫ってきたので、経験値稼ぎに行ってきマース♪」
 
 パタン。クラムシェル型の携帯を折りたたむ。
 
 「豚が。」
 
 それだけ呟いて、地縛霊の群れへと、丘は駆けた。
 
 最後に立ちはだかるのは、俺だ。
 ゴースト退治が出来る兵器を、もう、人間はもってるじゃないか、対能力者鎮圧兵器として。
 
 だったら尚更。『今生きている奴等は俺が俺の手で俺のしたいように俺の目的の為に滅ぼさないとダメじゃないか、俺たちはもう要らないんだから』。
 
――俺を不愉快にするものは悪だ。
――善悪なんてそんなものだ。楽しいことは悪ではないのだ。
――だから。『楽しさゆえに』人は悪びれず犯罪を犯せるし
――『楽しさゆえに』邪魔をされれば不愉快に感じる。
――立ちはだかるお前は、目の前の相手にとって絶対の悪のはずだ。
――立ちはだかるお前と同じぐらい、目の前の相手はお前を許せない。
――俺は きっと 立ちはだかるものを許せない。
 
 
 だから。
 だから、
 
 「俺が楽しいと思ったことは正しい!邪魔する奴は、バラして楽しむ!」
 
 爪先をねじ込まれた男性型の地縛霊が、叫びを上げて消えていく。
 星屑をちりばめた瑠璃色の刃が霊の四肢を切り落とし。
 滅びに煌いて燃え盛るナイフが霊の内臓を裂き乱す。
 
 「つまらねえなあああああ。」
 
 彼が時間をかけて磨き上げたのは、最も効率のいい「掻っ捌き方」。
 攻撃でも防御でもなく、『刃物で絶命させる』、ただそれだけの為に鍛え上げた、至近狙『斬』能力。
 
 それは、彼のかつての師、『筧次郎』が常々言っていた、『心臓を刺せば死ぬ』、という哲学の具現。
 群体を離れた地縛霊は、彼の進路を示すように次々と詠唱銀と化し散って行った。
 
 
――――――――
 
 「……。」
 
 丘の報告を聞いて、『男』は別所に電話をかけた。
 
 『丘・敬次郎を『二つ名扱い(ネームド)』にしろ。
  名は、『星屑の解体屋』。危険度A-。即時抹殺対象だ。』
 
 葛葉・いなりの抹殺対象の中に丘・敬次郎が加わったのは、これから僅か5分後のことだった。
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