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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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#6

【IF Another despair】一つの絶望の終焉 無限の連鎖の始まり


【20XX年 封鎖特区 鎌倉】

始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。

―エノシマ・エリア

レギオン、襲来。


「てめェェェェェェェェッ!!」

言うが早いか"宗主"へと踊りかかる"左利き"。
怒りに任せた一閃は今までよりも数段速く、並の使い手であったなら斬られたと気付く間もなく両断されていただろう。

そう、並の使い手ならば。

「ッ!!」
「あなたの相手は、私ではないでしょう?」

不快感を催すような邪悪な微笑を浮かべた"宗主"の右手は、自らを両断しようとした白刃を『摘んで』いた。
なんという膂力、もはや能力者のクラスを逸脱している。
尚も力を込め"宗主"を叩き斬らんとする"左利き"に"宗主"はやれやれと言った風に

「折角の彼女との逢瀬を邪魔するつもりはありませんよ。思う存分、愛を語り合ってくるといい」

穏やかな微笑を浮かべながら左手に携えていた戦鎚の石突で"左利き"の腹部をトン、と軽く打った。
軽く打った。それだけで"左利き"の身体は紙切れのように吹き飛び、
レギオン、そしてそれと戦っている"赤錆"と"蒼の偶像"イドラの元へと転がっていった。

「それに、私もこう見えて中々忙しい身でね。せいぜい貴方達はレギオンと愛し合うといいでしょう」

ククク、と牙を隠そうともしない醜悪な含み笑いを一つ。

「レギオンにはリリスの思念も混ぜてありますので、きっといい夢を見させてくれるでしょう。ねぇ?『 』さん。プラトニックな関係であったあなた方では及びもしないような夢を、ね」
「…て、めェ…」

愛刀を杖によろよろと立ち上がる"左利き"。

「それ以上その口を開いてみろ…3度、殺す。まあ開かなくても、殺すがな…」
「これはこれは恐ろしい。では、殺されてしまう前に退散するとしましょう。精々死なないように頑張ってください」

"宗主"とその軍勢は鮮やかとも言える手際で戦場から撤退していった。
まるで、レギオンから遠ざかる事そのものが目的の様に…

「待…「きゃあっ!!」

待て、と言いかけた所でイドラが目の前に吹き飛んできた。
吹き飛ばされた方を目線で追うと、"赤錆"の剛刃を物ともしない巨大なゴースト、レギオンが目に入った。

「"左利き"!ここはこのデカブツを倒す事が最上と判断する!『彼女』をこのままにしておくつもりか!」

ギリ、と歯軋りをし、レギオンへと向き直る"左利き"。
横を一瞥すると、土埃を払いながらイドラも立ち上がっていた。

―寒いの、イヤ…

「『姉ちゃん』…」

―シて、頂戴…

「…行きますっ!」

地を蹴り、突貫するイドラ。
その先では無数の触手を鞭、時には槍や剣の様に変化させ"赤錆"を圧倒しているレギオン。

――寂しいの、イヤ……

「『姉ちゃん』…ッ!」

その言葉でこちらを認識したのか、球体に無数についている人面詛の幾つかがこちらをねめつけた。

――シて、頂戴……

扇情的とも言える言葉を吐きながら、無数の触手で"左利き"を捕らえんと襲い来る。

本当に、もうだめなのか?
本当に、俺の知っている『姉ちゃん』じゃないのか?
本当に、本当に、本当に、本当に、本当に!!

俺は『姉ちゃん』を殺さなければならないのか!!

―寂しいの、イヤ…

「!?」

―シて、頂戴…

ふと、感じる違和感。
レギオンは『彼女』は…

―寒いの、イヤ…シて、頂戴…

違和感は

―寂しいの…

確信へと


―癒…して、頂戴…


変わった。


「おおおおおオオオオオオオオッ!!」


手にした刀に力を込め、触手を叩き斬る。
もう迷うものか。
『彼女』は自分を待っている。
その冷たい殻の中で、その孤独な檻の中で。
自分と逢えるのを、待っている!

「"赤錆"!比留間!30秒だけ時間を稼げ!後は俺が何とかする!!」

レギオンの触手と無尽蔵の体力に消耗戦を強いられている二人に"左利き"は叫ぶ。
その叫びを聞き"赤錆"とイドラは一瞬だけ驚いたように身体を強張らせ、
その後、ニヤリと笑った。

「了解した」
「魂の叫び、しかと聞き届けましたっ!」

"赤錆"の身の丈を超える巨大な鉄塊のような剣『絶讐』から繰り出される一撃は触手を纏めて切り払い、
イドラの華麗なフットワークにレギオンはその姿を捉えること適わず、

「Set Code Phantom Blade…!」
「龍撃砲(バスタァーーーーービィィィーーーームッッ!!)」

黒き影を纏った剣に残りの触手を消滅させられ、
眩き光の奔流はレギオンの体制を崩す。

「「今だッ!!」」
「応ッッ!!」

全速力で駆け出した。
再生が間に合わないのか、半端に伸びた触手で苦し紛れにレギオンが投げつける瓦礫を軽く避け跳躍。
急降下し、レギオンの真上からその本体に刀を突き立てる!
腐った肉を貫くような手応え。
意にも解さず左腕に力を込め、『殻を切り開いていく』。
殻の中には、闇が広がっていた。
"左利き"には予想通りだったのか、そうである事が解っていたかの様に素早く闇へ潜り込む。
"左利き"が進入すると同時に、切り開かれた口はピタリと閉じてしまった。





其処は暗かった。
上下左右の感覚もなく、自ら発した声さえ自分に聞こえない。
……孤独を感じるには、十分すぎる環境だった。

目線の先に存在するのは、肉を捏ねて作った不恰好な人型。
まるで悪趣味な冗談のような、赤と黒の血で染まった肉の塊。
それが『誰』であるのか"左利き"は理解していた。

―寒いの、イヤ…シて、頂戴…

「ああ、わかってるよ…ちょっと時間が掛かったけど、また、会いに来た」

―寂しいの、イヤ…シて、頂戴…

"左利き"は肉塊へ向かって一歩踏み出す。
肉塊は触手を放ち"左利き"の腹部を貫く。

「こんな時なんて言っていいか解らないけど、その…なんだ…」

"左利き"は構わず歩を進める。
肉塊は更に3本の触手を"左利き"の身体へ突き刺す。

「一緒に笑って、一緒に泣いて…一緒にいた、あの時間…はは、懐かしいな」

"左利き"は肉の目の前に到達した。
肉塊は無数の触手を"左利き"の身体へ突き刺す。

「好きだぜ。これで、また一緒だ」

"左利き"は左腕を伸ばし、醜悪な肉塊を、愛しい『彼女』を、抱き寄せた。

視界が、白く染まった。





「な、何が起こっている…!」

レギオンが鳴動を始めた。球体が収縮を繰り返し、辺りに青白い粉のようなものを散布している。

――粉!?

「くそっ!そう言う事か"宗主"!」
「"赤錆"さん、一体…」

冷や汗を流しながらイドラは"赤錆"へ問いかける。

「早い話が時限爆弾だ。広域の粉塵爆破でこの辺りを吹き飛ばすつもりらしい」
「そ、そんな!それじゃ、ここへ向かっている能力者の方々は!」
「その連中諸共吹き飛ばす予定だったみたいだな。やってくれる…!」

撤退だ、とこの場から離脱しようとする"赤錆"を、慌ててイドラが制止する。

「待ってください!"左利き"さんが…」
「ヤツなら心配あるまい。俺達が共倒れになることこそ"宗主"の思う壺だと判断する」
「でも…!」

そこでイドラは気付いた。
"赤錆"の握り締めた拳から、血が流れ出ている事に。
"赤錆"も解っているのだ。解ってはいるが、どうしようもない。
悔しさがこみ上げた。
『明日』を謳った自分が、一人の人間の明日すら護れなかった事に。

「…撤退だ」
「…はい」

瓦礫を飛び越えながら戦場を後にする二人。
イドラは肩越しに脈動するレギオンを一瞥し、

―信じています。姉が見込んだ貴方の事を。だから、必ず生きていて。

人々の『明日』たらんとする決意を改めて胸に刻み込んだ。





【本日未明、エノシマエリア西方で起きた大爆発の被害は甚大なものとなり、死者、行方不明者は今だ不明となっております。尚、この騒動の影には"宗主"を名乗る者の暗躍が噂されており…】
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