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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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#21
【IF Another despair】混線の結論

エリア・シチリガハマヒガシ。
 まだ多く残った住宅の内一つで、秘密の作戦会議が行われている。
 
 「ジュースお持ちしました♪」
 「ジュースはいいからお嬢ちゃん座って座って♪」
 「俺はやらないぞ。その情報通りじゃ、歯牙にもかからんじゃないか。」
 「んじゃあ戦わなくてもいいよ?
  相手が相手だし、無理にとは言わない。」
 「だから詠唱兵器を僕等に渡して一般人の振りをしてれば安全じゃありませんか♪」
 「抵抗できネーだろが!教団に殺されろってのか!」
 「自分の身を守る方法までは教えません。
  僕はただ、あの『嵐』をぶっち殺す方法を議論したいだけー。あ、オレンジジュースください。」
 「はい♪」
 「お嬢さんのとても口に出せないようなジュースも、いたあぃ!」
 「……全く。
  相手は強大だ。時間も無い。
  僕等『掃除屋』は、あの子を止められるのは今を置いて他にないと結論したんだ。」
 「『幽霊せせり』、シチリガハマヒガシを留守にする気かよ。」
 「皆なら大丈夫だと思うけど?
  どうせ悪いことしたら、後でしょっ引くだけだし。」
 「そうそう、この『掃除屋』筧・次郎が地獄の果てまで追っかけて、その命を頂きます♪」
 「お前本当に何者なの?」
 「あはー。ねえお嬢ちゃん、お名前なんていうんですー?」
 「……どうするんだよ。」
 「……嵐は浜沿いに東に進んでいる。つまり、『祈らず』はもう浜について東に向かっているんだ。それを追撃する。」
 「『ムーンライズ』ちゃん、『祈らず』は東に何か宛が?」
 「わからない、です。何も教えてくれなかった……ので。時間もありません、でした。」
 「切り開き甲斐のあるいい筋肉してますのにねえ。」
 「いい筋肉……です?」
 
 ふと自分の腕の肉をぐにぐにしてみる『ムーンライズ』。
 
 「丘君、趣味の話に口を出す気はないけど、後で。」
 「ふむ。
  現状、『嵐』は『祈らず』の軍団、というか師団を追跡中、です。
  で、われらが『嵐』を追いかけることになれば、『嵐』は追いつつも追われるもの、と言うことになります。
  戦術上では、撃破しやすい状況とはなるわけですが。
  が、ね。
  『嵐』というその名の通り、あれはいい意味でも悪い意味でも理性的判断をしません。
  あれの周りに吹き荒れる風、竜巻、大雨、雷、時々かまいたちは自動的でして。
  注意を逸らすことの意味が薄くなる。」
 「自動的……。」
 「拒絶するための結界だと思えばよろしい。
  全方位結界だから当然、後ろから襲おうがメリットは無い。生半可な能力者なら、風圧で動けなくなって、『はいおしまい』です。」
 「……。」
 
 『追いつつも追われるもの』にする、という作戦を説きながら、その有用性を肯定しない丘の態度に、
 『ムーンライズ』は唇に力を入れ、焦れていた。
 
 「お乳つついて、ダーリン♪」
 「おちつくのは丘君だ。」
 「お乳はつつかない、です。ダーリンじゃない、です。」
 「あはー♪
  まあまあ。だから、普通にやったんじゃあ、『追う』ことにならんのですな。
  だが、彼女の欠陥は、『一人である』ということ。
  複数の念動剣を使い身を守ってはいるが、所詮は一人の精神。
  『嵐』の中心に危機が迫っている、と思わせることが出来れば、嵐は結界ではなく、武器として使われることになるでしょう。
  少なくとも、意識がこちらに向く。」
 「どうやって、『嵐』の中心まで。」
 
 壁がガン!と音を立て、丘以外の全員が目を向けた。
 小さな穴が開いている。
 
 「僕の水刃手裏剣なら。
  透明で見えず、音もしない棒手裏剣に、弾丸の速度、術式による能力者への破壊力。
  初撃だけなら、防御貫通させる自信があります。」
 
 それは、抜く手も見せない。
 否、『体のありとあらゆる場所から目線すら向けずノーモーションで出せる』斬撃。
 反則ギリギリの水刃手裏剣。
 暗殺という目的と、水刃手裏剣と言う技の融合がもたらした、『卑怯』。
 
 「それからは。
  皆さんの力が必要になる。
  いいですか……?」
 
 
――――
 
 「ふむ。」
 
 報告書をめくるアーバインが微かに片眉を上げた。
 
 「『銅』さん、あなたが前戦った、アレ。動きが見えます。」
 「……どれ?」
 「ユイガハマあたりに待機、お願いできますでしょうか。」
 「……何で?」
 「データが欲しいのです。この……アングラデバイスを使っているツーテールの水練忍者の。」
 「それは、命令?」
 「『お願いします』。あなたが適任だと判断いたしました。」
 「待機、だけ?」
 「時間を稼いでもらいたい、のです。前のレイン様のときのように。
  勿論、『斃してしまっても構いません』よ?」
 
 確認するようなアーバインの笑みに、『銅』は歯をむき出して笑った。
 
 
――――
 
 「こんにちわぁ♪」
 「間芝先輩!そいつは殺してください!」
 「僕は街田だ!」
 「へえ……あなたが『掃除屋』の片割れですかあ……。
  寸詰まりのツーテールと背の高い優男……。
  確かに『掃除屋』っぽいですねえ♪」
 「君、嫌な趣味してるね。」
 「目標まであと40メートル!
  重装備でないものは下がり待機!」
 「こんなところで、何してるんです、先輩♪」
 「君に先輩と呼ばれる筋合いは無いな、うっ!」
 
 『幽霊せせり』が、『銅』が蹴り上げた土で目潰しを受ける。
 嗜虐心を顔一杯に湛えて『銅』が走り込む。
 そこに降り注ぐ、刃の雨。
 
 「……なるほど、『星屑』ですか。」
 
 上半身をこそぎ取られた『銅』が、丘に目を向ける。
 音も無く色も無い、水の刃の雨。これこそが、『星屑の解体屋』-StarDustman-の真の意味。
 折りしも大嵐の渦中、水分には不足しない。
 
 「君……ずるいなあ。」
 
 充血した目で、『銅』をにらむ『幽霊せせり』。
 
 「ずるい?」
 
 哄笑する『銅』。
 
 「ではあなたはゴースト退治のとき、常に一対一を挑んでいたとでも?
  リリスを相手に数の利を生かすことを捨てたと?
  自分の拘りの為なら他者の作戦も踏みにじったと?
  そ ん な は ず は 無 い で しょ う ! 」
 
 吼える『銅』の上半身を、今度は水の刃が斜めに大きく切り裂いた。
 
 「街田先輩!
  そいつはそういう奴です!」
 「……そうだね。
  君の言うとおりだ。
  有利な戦いをしたいと思うものだし、それは確かにそうだ。
  ……でもレディとしては慎みに欠ける。
  ちょっと教育してあげよう、京都女の礼儀って奴を。
  まあ受け売りだけどね。」
 
 白燐装甲に輝く『幽霊せせり』に『銅』が牙道砲を打ち込むが、術扇で優雅にずらされる。
 
 「まずは身のこなし方から試してみようか。
  『消えてなくなれっ!』」
 
 『銅』に向かって、煌く白燐蟲が散弾となって襲い掛かった。
 
――――
 
 「かかった!
  シフトB!」
 
 20m先。振り向いた『嵐公女』の鳩尾には、背から貫通した穴が一つ。
 そこから銀色の血液を流しながら、丘の軍勢をニコニコと見つめる。
 
 「……女の子を後ろから襲うなんて。」
 「来ますよ!」
 「悪い子(^^)」
 
 数本の異形の念動剣が丘に向かって放たれる。
 一本は腹を貫くが、残りは爆水掌と剣で弾く。流れた刃を、白燐装甲に身を固めた、重装の能力者が受け止めた。
 後方から軽装部隊が一人を残して走りこみ、重装部隊が受け止めた念動剣を手に収めて突撃する。
 丘がその先頭を切る。腹を貫いた念動剣を自らの手で引き抜きながら。
 
 
 残る一人はヘリオンサイン。
 
 上空に描かれた文字は、
 
 『祈らず、嵐を押しとどめよ』
 
 「あーっはっはっはっはっはっは♪
  あの程度で、あの女が止まると思ってるんですかぁ?」
 
 ヘリオンサインを見て『銅』は笑った。
 『銅』は蟲を全て切り捨てて、森羅呼吸法で丘から受けた傷も全てふさぎきっている。
 
 「止めて見せるさ。
  僕も丘君も、指を咥えて見てるのは、カッコ悪いって思ってる性質だからね。」
 「わたしは無駄な足掻きって嫌いです、醜くて♪」
 「じゃあ君は。
  何で僕の相手をしているのかな?
  僕の相手を君ごときがするなんて『無駄なのに』。」
 
 柄にも無い挑発と、演技の笑顔。
 応じる『銅』の歪んだ笑顔は、それを見抜いていたのか否か。
 
 「来るぞ!
  各自敵の念動剣を構えて、防ぎ切れ!」
 
――――
 
 「助けに来た、です。」
 「あなたも、来ていたのですか……。」
 
 『ムーンライズ』は単騎にてエリア・ユイガハマを北上、『嵐公女』を回り込む形で、エリア・オオマチの沿岸にて『祈らず』に辿りついた。
 
 「ヘリオンサイン……。」
 「ええ、見ました……。」
 「押しとどめて、ください、です。」
 「策はあるみたいですね。」
 
 『祈らず』はやれやれと息をつくと、最早何度目ともしれない演説を子らに唱え始めた。
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