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あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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【IF Another despair】 煉獄の朱、飛天の龍

【20XX年 封鎖特区 鎌倉】

始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。

数年前政府により戒厳令が布かれ、完全に外界との接触を絶つ為に封鎖特区として指定、厳重な監視の下で彼らはそこで生活している。


『鎌倉内・某地区…廃墟』


そこは、かつて人が住んでいた家宅。
かつて、何人もの一般人が出入りしていたであろう街中のジム。

…今はその名残は外装のみ。
中が見えないほど曇ったガラス
窓ガラスにいたっては割ろうとした形跡なのは、いたるところにヒビが入っている。
入る光は屈折して前で落ち、中は薄暗く人気が無いように見える。


…その奥、一番の暗がりに、一つの黒い塊があった。

否、ただの塊ではない。


適度、というよりは適当に切りそろえた髪
横に携えた日本刀
光の薄い右目に対し、爛々と輝く左目

【男】は、いつからなのか想像できないほど長くそこに座っていた。
誰が帰ってくるわけでもない。
自分が護ろうと思っていた者も、家族も、…弟分も。
それでも、【男】は奥に座り込んでいた。
まるで、何かを待つかのように…何かを『諦めている』かのように。

…そのとき、
少しひしゃげていたドアが動き、人影が逆行の中に現れた。

脇の日本刀を瞬間的に掴み、【男】は人影に斬りかかる。


「俺だ。」

その声で、【男】は刃を人影の首筋で寸止めする。
光を宿している左目で見たその人影は…。

「…こう、と…?」
「久しぶりだな。俺が区外に出てからぶり、か。」

目の前にいたのは、かつて【盟友】として背中をたまに預けていた青年。
銀の鋭い瞳も、冷静な面立ちも変わってはいない。
ただ…やはり、あの頃より年を取っていたが。

「…なんで、ここに? 区外から区内に入ることは簡単には…」
「政府に許可をもらう必要は無い。…いざとなれば、壁を壊すなり乗り越えるなりすればいいからな。」
「…でも、政府にカード…」
「…これか?」

そういって青年が取り出したのは、紛れもなくイグニッションカード。

「政府に出したのはフェイク…強化時用の代用品だ。いずれ動かなければならない時に、制限のかかったものは使い物にならないだろうからな。」
「…ずいぶんしたたかになったな…」
「これだけ時間がたてば、変わるものだ。…さて、本題はこれじゃない。」

そういって、青年は『男』に数枚の写真…プリントアウト物らしく解像度が悪いもの…を差し出した。

「…ッ!」

【男】は、その写真を見て息を呑んだ。
そこにあったのは…
『【覆面】を被ったらしき男』
そして、
『赤いチャイナでポニーテールらしき格好の少女』

「…これ…!」
「ネットのアングラ画像だが…今の政府では、こっちの方が信憑性が高い。」
「……あの馬鹿、やっぱり『迷ってやがった』のか…。」

『赤いチャイナの少女』の写真を見ながら、【男】が呆れた様に…そして悲しそうに呟く。
それを静かに見ながら、青年は言葉を続ける。

「それに、これだけ荒廃した鎌倉にもまだ、『教団』に牙を向けるレジスタンスがチーム単位で複数いる。相手がどれだけでかかろうが、心を曲げないものたちがな…。」

「……」

「…どうするんだ、椿。このまま、ここで燻っているつもりか?」

その言葉で、【男】…朱堂・椿は【盟友】…式波・巧斗がなぜここに来たのかを理解した。

この男は、俺に発破をかけにきたのだ。
『消える』のを待つだけだった俺に、「再び走り出せ」、と…。

「…だよなぁ…。」

ボツリ、と言葉が出た。

「…どっかの誰かさんは、せっかくまた手に入れた『居場所』ほっぽっといてまでここに来てるもんなぁ…。」

そういいながら意地悪そうに微笑み、椿は巧斗を見る。
巧斗は憮然とした表情で椿を見返す。
…誰のことを言われたのかは、しっかり分かっているようだ。


自分の目指した「完全勝利」が無理なのならば、せめて自分の命が消えるまでは、己の『信念』ぐらいは…!

日本刀を完全に鞘に納めると、椿はニッと巧斗に笑った。

「どうせ『人より短い命』だ。やりたい事、やれる事をやったほうが得ってことだな。」
「…そういうことだ。」

そういって巧斗も微笑み…かけた瞬間。

『!!』

椿はとっさに巧斗のコートの襟に手をかけ自分の身ごと引き、巧斗はそのベクトルに逆らわない様に中に飛び込む。
その一瞬後、銃弾の雨が入り口に降り注いだ。


外に並ぶのは、対能力者兵装で固めた一軍隊。
どうやら、巧斗が途中から付けられていたようだ。

「ちぃ、『教団』の奴らか…!」
「…前運動にはちょうどいいだろう?」
「…てめぇ、わかってて連れてきたな?」

呆れたような睨み笑みで巧斗を睨むと、巧斗は無表情でイグカを構える。

それは、巧斗がかつて『正義の味方』の位置づけにある結社に所属していた頃の言葉。
それは、全てを無くした筈の巧斗に、今なお息づく信条。
自分の『世界』は小さくなったが…まだ、護らなければならない!


「…世界の平和を護るため、猛る想いを力に代えて…!

叫べ、心に! イグニッション!」


その言葉通りの心に答え、カードは力を解放する。
右手に宿るは、龍をかたどった銀の手甲。
左手に宿るは、神を撃つ名を冠した漆黒の手甲。

「5秒稼いでくれ。一気に崩す!」
「ったく、久々だってのに人使い荒いな…ま、いいか!」

言いながら椿は日本刀の切っ先を鞘ごと家の外に向ける。狙うは…隊長格らしき男!

「緋炎縛鎖!」

そう言い放った瞬間、炎の蔓が目標どおり隊長に絡みつく。…『フレイムバインディング』である。

「う、うわあああっ!!」

いきなりの蔓に、情けない声を上げて男が振りほどこうとする。が、麻痺を引き起こしているためかまったく外れない。
隊長に兵の意識が行ったのを、椿は見逃さなかった。
瞬間的に走り出し、兵の一人の前でぶれずに止まる。

「!?」
「天命流斬式…『陽閃』。」

抜刀の構えから逆袈裟に抜かれた斬撃は、アーマーの表面のみを切り裂く。…だが、その軌道には『続き』がある。
返された刃は、見透かしたかのようにマスクとアーマーの隙間を走り、首と胴を切り離した。

「ひいぃぃっ!!」

横で起きた瞬間の惨劇と舞い飛ぶ赤に、兵が一気に浮き足立つ。

「避けろ!」

その声を合図に、椿は地を蹴り宙に跳ぶ。

「龍撃砲昇華…秘拳・天龍!!」

その場所を通ったのは、青を通り越し『銀色』にまで昇華した龍の気。
咆哮の如き衝撃は、うろたえ踏ん張りの利かない軍を一気になぎ倒した。

椿は、技の残心から構えを解いた巧斗の真横にスタン、と降り立つ。

「行くぞ!」
「応よ!」

止めを刺す暇すらも惜しむように、二人は倒れた教団兵たちを通り越して走り出した。


「これからどうする! レジスタンスと合流するにしても、正確な向こうの動向がわかんねぇぞ!?」

走りながら椿は巧斗に叫ぶ。巧斗はそれを聞くと、先ほどの写真の一つを見せた。『【覆面】を被ったらしき男』の方だ。

「まずは、こちらとしての味方を増やすのが有益だ。…それに、やっと見つけた手がかりだ、絶対探し出してみせる…!」

写真を仕舞いながら真剣に言う巧斗に、椿はかつて『彼ら』がいた結社のイメージを思い浮かべた。
熱く、真っ直ぐな結社のあり方を…。

「お前はどうする、“フレイム”」

いきなり呼ばれたその名は、全てが『壊れた』あとに名乗った椿の「通り名」。

「…そだなぁ…わざわざハッパかけに来てくれたんだ。徹底的につきあわねぇとな、“ドラゴン”」

返したのは、彼が区外に『脱出』するまで名乗っていた、巧斗の「通り名」。

お互いを『二つ名』で呼び合ったあと、ふっと笑あってそれぞれ片手拳を差し出し、甲をぶつける。
戦争のたびにやっていた、団結の証。
響かない音は、逆に重い意味をつかさどる。

「最後まで走りぬいてみせようぜ!」
「無論だ!」

そう言い合い、二人は走る速度を上げ、全力で向かった。

『写真が取られた』とされる場所…エノシマ・エリアへ。
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