あってはならない、否定できない可能性――最悪の終末。
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【20XX年 封鎖特区 鎌倉】
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
―エノシマ・エリア
(「…数日は雨になるかな」)
空を覆う鉛色の雲。
先日の爆発による影響と考えるのが妥当だろう。
そんな事を考えながら、比留間・イドラは廃ビルを跳躍しながら進軍していた。
「…っ!?」
ふいに感じる何かの気配。敵か、味方か、それともゴーストか。
「おーい、小姐~」
人だ。いやそれ以前に。
「張先生ッ!!?」
鉄パイプを杖代わりにして歩く、満身創痍の"亡霊"こと張・潤風がひらひらと手を振っていた。
「どうしたんですか、その傷!」
「いヤー。ちょっとコケましてね…ははは面目ナーイ」
"亡霊"の負傷具合を確認。
「酷い…」
全身打撲、擦り傷。胸骨骨折の疑いあり。
とくに左足首は重傷。腱断裂、粉砕骨折。
「5日は絶対安静にしないと…」
なるたけ安全な場所がいい、当然だ。迷わず決断する。
「『廃屋』に戻りましょう。肩を貸してください」
「あいや! イドラ小姐の手間を煩わせるほどでハ!
こんな傷…我慢すれバ何とモ…」
「我慢しても痛みが消えるわけじゃないですっ!!!」
ハッとして顔をあげる張。イドラは目に涙を一杯たくわえていた。
「傷も消えません。ちゃんと治療してください…」
「…。すみませンでシタ、小姐。あなたのお願いとあらバ。全身全霊で」
"亡霊"は自分が元気だったら百回自分を殴ってやっただろうに、と思いながらイドラに悲しい顔をさせてしまった事を後悔した。
―廃屋Pigeon-Blood
ビルの屋上に、巨大な旗が翻っていた。
旗にはそこの女主人の顔がデフォルメされて描かれている。
どう見ても異様な光景だが、そんな疑問をあざ笑うかのように描かれた顔は晴れ晴れと笑っていた。
我らが義侠集団『廃屋』、本拠地の証である。
「女子供の非難を優先しろ! 荷物は一個だけ、ですわよ!!」
普段は活気こそあれ平穏な商業区は、さながら戦場のように混乱していた。
一番高い演説台に仁王立ちし、手持ちの子分を使い住民たちの避難を指示するは廃屋の"首魁"ピジョン・ブラッド。
手を振りかざして指示を飛ばすたびに、赤いドレスの裾と自慢の金髪が風にたなびいた。
「"葬失"の動向はどうなっておりましてッ!!?」
「あと一時間後に…いや!? 加速してます、畜生!! 30分できます!」
"葬失"には知性が残っているのか。こちらの避難の動きの察知したのだろうか。
眉をしかめ、うむむと唸る"首魁"。
「後の指示は任せますわ。カタギの方々の避難が完了したのであれば、
あなたも早くお逃げなさい」
「"首魁"! どこへ行かれるんですか!?」
「『わたくしが』うって出ますわ」
「!? む、無茶です! だってあいつは…!!」
「『無理を通して道理を蹴散らす』のが、我々『廃屋Pigion-Blood』ですわよ。
ルーキー?」
―イグニッション
「ど…、"首魁"」
若い男が見上げたその姿は、自分の何倍も頼もしく見えるドレスの女傑。
塵一つ浮かすまいとする優美な足運びのまま、
ピジョン・ブラッドは正々堂々と真正面から"葬失"の方へと進んでいった。
「"首魁"…お願いしますッッッ!!!!!」
ありったけの声で叫んで頭を下げた男は、自分が任された仕事を死んでもやり抜こうと腹に決めた。
「廃屋は全てをのみこむ。ですが…」
まだ何も見えない地平線に向かって、ビル群を背にした"首魁"は獣のように目を細めて微笑む。
「あなたについては、
わたくし廃屋の"首魁"、ピジョン・ブラッドの名の下に、
お引取り願いますわ」
スカートの裾を持ち上げ、ゆるりと頭を下げる。
地平線に、蠢く黒い何かが出現した。
一息つくまもなく巨大化…否、こちらに近づいてくる。
「左様ですか…。それでは、仕方ありませんわね」
頭を下げたまま、"首魁"が呟く。
次いで跳ね飛ばされたかのように頭をあげる。
「ならば、こちらにも考えがあります」
流麗な動作とは裏腹に、我らが"首魁"は軽々と自分の何倍もある鉄骨を持ち上げて投擲体勢に入った。
「照準よろし…」
筋肉を限界まで引き絞る。極太の綱がきしむような音。
瞬間、大型ミサルが発射されたかのような衝撃波と共に鉄骨が"葬失"めがけて放たれた。
吹き上がる粉塵。大地が、振動した。
大地に足を突き立てる"首魁"。
まるで歌舞伎役者のように手を広げ、牙を剥いて笑う。
「誰が言ったか内助の功!!
時代遅れと笑わば笑え!!
二度会ったなら、それは兄弟!
護ってみせようこの『廃屋(かぞく)』ッ!!」
動力炉が同調するかのように、けたまましく回転して詠唱銀を取り込んでいく。
「わたくしを誰だと思っていやがるッッ!!!!」
翻る真紅のドレス。
拳を固め、ファイティングポーズをとる。
「無傷で済むと思うなよ、化物ッッッッ!!」
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
―エノシマ・エリア
(「…数日は雨になるかな」)
空を覆う鉛色の雲。
先日の爆発による影響と考えるのが妥当だろう。
そんな事を考えながら、比留間・イドラは廃ビルを跳躍しながら進軍していた。
「…っ!?」
ふいに感じる何かの気配。敵か、味方か、それともゴーストか。
「おーい、小姐~」
人だ。いやそれ以前に。
「張先生ッ!!?」
鉄パイプを杖代わりにして歩く、満身創痍の"亡霊"こと張・潤風がひらひらと手を振っていた。
「どうしたんですか、その傷!」
「いヤー。ちょっとコケましてね…ははは面目ナーイ」
"亡霊"の負傷具合を確認。
「酷い…」
全身打撲、擦り傷。胸骨骨折の疑いあり。
とくに左足首は重傷。腱断裂、粉砕骨折。
「5日は絶対安静にしないと…」
なるたけ安全な場所がいい、当然だ。迷わず決断する。
「『廃屋』に戻りましょう。肩を貸してください」
「あいや! イドラ小姐の手間を煩わせるほどでハ!
こんな傷…我慢すれバ何とモ…」
「我慢しても痛みが消えるわけじゃないですっ!!!」
ハッとして顔をあげる張。イドラは目に涙を一杯たくわえていた。
「傷も消えません。ちゃんと治療してください…」
「…。すみませンでシタ、小姐。あなたのお願いとあらバ。全身全霊で」
"亡霊"は自分が元気だったら百回自分を殴ってやっただろうに、と思いながらイドラに悲しい顔をさせてしまった事を後悔した。
―廃屋Pigeon-Blood
ビルの屋上に、巨大な旗が翻っていた。
旗にはそこの女主人の顔がデフォルメされて描かれている。
どう見ても異様な光景だが、そんな疑問をあざ笑うかのように描かれた顔は晴れ晴れと笑っていた。
我らが義侠集団『廃屋』、本拠地の証である。
「女子供の非難を優先しろ! 荷物は一個だけ、ですわよ!!」
普段は活気こそあれ平穏な商業区は、さながら戦場のように混乱していた。
一番高い演説台に仁王立ちし、手持ちの子分を使い住民たちの避難を指示するは廃屋の"首魁"ピジョン・ブラッド。
手を振りかざして指示を飛ばすたびに、赤いドレスの裾と自慢の金髪が風にたなびいた。
「"葬失"の動向はどうなっておりましてッ!!?」
「あと一時間後に…いや!? 加速してます、畜生!! 30分できます!」
"葬失"には知性が残っているのか。こちらの避難の動きの察知したのだろうか。
眉をしかめ、うむむと唸る"首魁"。
「後の指示は任せますわ。カタギの方々の避難が完了したのであれば、
あなたも早くお逃げなさい」
「"首魁"! どこへ行かれるんですか!?」
「『わたくしが』うって出ますわ」
「!? む、無茶です! だってあいつは…!!」
「『無理を通して道理を蹴散らす』のが、我々『廃屋Pigion-Blood』ですわよ。
ルーキー?」
―イグニッション
「ど…、"首魁"」
若い男が見上げたその姿は、自分の何倍も頼もしく見えるドレスの女傑。
塵一つ浮かすまいとする優美な足運びのまま、
ピジョン・ブラッドは正々堂々と真正面から"葬失"の方へと進んでいった。
「"首魁"…お願いしますッッッ!!!!!」
ありったけの声で叫んで頭を下げた男は、自分が任された仕事を死んでもやり抜こうと腹に決めた。
「廃屋は全てをのみこむ。ですが…」
まだ何も見えない地平線に向かって、ビル群を背にした"首魁"は獣のように目を細めて微笑む。
「あなたについては、
わたくし廃屋の"首魁"、ピジョン・ブラッドの名の下に、
お引取り願いますわ」
スカートの裾を持ち上げ、ゆるりと頭を下げる。
地平線に、蠢く黒い何かが出現した。
一息つくまもなく巨大化…否、こちらに近づいてくる。
「左様ですか…。それでは、仕方ありませんわね」
頭を下げたまま、"首魁"が呟く。
次いで跳ね飛ばされたかのように頭をあげる。
「ならば、こちらにも考えがあります」
流麗な動作とは裏腹に、我らが"首魁"は軽々と自分の何倍もある鉄骨を持ち上げて投擲体勢に入った。
「照準よろし…」
筋肉を限界まで引き絞る。極太の綱がきしむような音。
瞬間、大型ミサルが発射されたかのような衝撃波と共に鉄骨が"葬失"めがけて放たれた。
吹き上がる粉塵。大地が、振動した。
大地に足を突き立てる"首魁"。
まるで歌舞伎役者のように手を広げ、牙を剥いて笑う。
「誰が言ったか内助の功!!
時代遅れと笑わば笑え!!
二度会ったなら、それは兄弟!
護ってみせようこの『廃屋(かぞく)』ッ!!」
動力炉が同調するかのように、けたまましく回転して詠唱銀を取り込んでいく。
「わたくしを誰だと思っていやがるッッ!!!!」
翻る真紅のドレス。
拳を固め、ファイティングポーズをとる。
「無傷で済むと思うなよ、化物ッッッッ!!」
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